2010.08.12 Thursday
「EVショック」がやってくる
8月11日の静岡新聞夕刊の一面記事より。
長めに引用させてもらいました。これを調査して「EVショック」と命名した静岡経済研究所と、これを第一面に載せた静岡新聞はグッジョブです。前々から、この情報が広く知られ、危機感が共有されるべきだと思っていました。
記事内では、静岡県全体のEVショック度について書かれていますが、変速機大手のジヤトコや、変速機の部品も作っているユニプレスなどの企業がある富士市は、特に大きな「EVショック」が襲ってくることは想像できます。
電気自動車はエンジンがない分、ガソリン車に比べて部品点数が半分くらいで済むらしいです。電気自動車の基本原理はラジコンと同じでモーターの回転数を直接制御すればいいので、変速機はまったく要らなくなってしまいます。電池の性能や価格の問題が解決されていないので、本格的な普及はまだまだ先だと思いますが、ガソリン車から電気自動車へ転換は、(10年先か、30年先か分りませんが…)いつか必ず来るでしょう。
しかし、これからすぐに部品メーカーが斜陽に入っていくかというとそんなことは無いと思います。むしろ「市場成長率が低い」というコンセンサスができあがった製品は、新規参入や同業他社の追加投資意欲が減退し競争がゆるむことで、すでに高いシェアと技術力を持っている企業においては、BGCマトリクス(下図)でいうところの「金のなる木」になって、しばらくは今までより多いキャッシュフローを生み続けることになると思います。そして、しばらくしてから(この"しばらく"がいつまでかも問題ですが…)パタッと市場が消えてしまいます。
(@IT情報マネジメント用語事典「プロダクト・ポートフォリオマネジメント」より)
「金のなる木」から得た収益を「問題児」に投入し、「花形製品」に育てるといった形が普通の企業戦略ですが、その"変速機"に替わる新しい「花形製品」が、もう一度富士市という場所を必要とするかなんてことは分らないです。その製品(またはサービス)が必要とする"地の利"は、東京かもしれないし、中国かもしれないし、メキシコかもしれない。
ジヤトコのような大手自動車部品メーカーは、もうずっと前から生き残る道を考えているだろうし、十分な情報も時間的猶予も内部留保もあるので、その先も製造する製品を変えながら生き残っていくことと思います。
問題なのは、対策を考えていない(あるいは対策する余力がない)、大手自動車部品メーカーからの仕事が多い地元の中小零細企業や、大手自動車部品メーカーの従業員とその家族の消費をあてにしてきた商店や、大手自動車部品メーカーからの法人市民税や固定資産税で潤ってきた富士市役所だったりするでしょう。何の対策もしてないうちに、パタッと仕事や消費や税収が激減する、その時はいずれ来ます。
日本国民にはどこに住んでもいい自由があるので、仕事がなくなれば、仕事があって環境のいいところに引っ越せばいいのかもしれません。ただ、僕は富士市で生まれ育ったし、富士市が好きだし、今は富士市の社会良くするお手伝いを仕事にしているし、これからも仕事にしていきたいし、一生富士市に住みたいのです。…なので、なんとかして富士市に新しい成長産業が育って根をはって欲しいし、また、そうなるように動いていきたいと思っています。
夕張市が炭鉱という産業と共に没落してしまったようなことは避けなければいけません。「富士市はお金持ちだから♪」とかいって税金を無駄遣いするのは、今すぐにやめないと、本当にヤバいことになると思います。
電気自動車(EV)が普及した場合、現在約3兆2500億円に上る県内の自動車部品出荷額の半分が失われる可能性があることが静岡経済研究所の調べで分かった。こうした試算は初。同研究所の中嶋寿志専務理事は「本県自動車部品業界が全国で最もEV化の影響を受ける。早期に行政、業界を挙げた対策が必要」と警鐘を鳴らしている。
EVは従来の内燃機関自動車の主要構成部品であるエンジンや変速機などが不要になる。同研究所は、この変化が本県主要産業である自動車部品業界にどの程度の影響を与えるのか、“EVショック度”と名付けて工業統計を基に独自に算出した。
その結果、本県のEVショック度は48・3%と全国平均(28・5%)を大幅に上回り、自動車部品出荷額上位5県で最も高いことが分かった。隣接する神奈川県は34・1%、愛知県は18・3%にとどまった。本県で生産される自動車部品は、変速機に関連する「駆動・伝導・操縦装置部品」が38・5%を占め、特に構成割合が高いことが理由とみられる。中嶋専務理事は「ジヤトコやホンダの浜松製作所、ユニバンスといった大手変速機メーカーが県内に立地し、その下請けメーカーも多数集積している」とし、「イノベーションに合わせた構造変革を」と求めている。
長めに引用させてもらいました。これを調査して「EVショック」と命名した静岡経済研究所と、これを第一面に載せた静岡新聞はグッジョブです。前々から、この情報が広く知られ、危機感が共有されるべきだと思っていました。
記事内では、静岡県全体のEVショック度について書かれていますが、変速機大手のジヤトコや、変速機の部品も作っているユニプレスなどの企業がある富士市は、特に大きな「EVショック」が襲ってくることは想像できます。
電気自動車はエンジンがない分、ガソリン車に比べて部品点数が半分くらいで済むらしいです。電気自動車の基本原理はラジコンと同じでモーターの回転数を直接制御すればいいので、変速機はまったく要らなくなってしまいます。電池の性能や価格の問題が解決されていないので、本格的な普及はまだまだ先だと思いますが、ガソリン車から電気自動車へ転換は、(10年先か、30年先か分りませんが…)いつか必ず来るでしょう。
しかし、これからすぐに部品メーカーが斜陽に入っていくかというとそんなことは無いと思います。むしろ「市場成長率が低い」というコンセンサスができあがった製品は、新規参入や同業他社の追加投資意欲が減退し競争がゆるむことで、すでに高いシェアと技術力を持っている企業においては、BGCマトリクス(下図)でいうところの「金のなる木」になって、しばらくは今までより多いキャッシュフローを生み続けることになると思います。そして、しばらくしてから(この"しばらく"がいつまでかも問題ですが…)パタッと市場が消えてしまいます。
(@IT情報マネジメント用語事典「プロダクト・ポートフォリオマネジメント」より)
「金のなる木」から得た収益を「問題児」に投入し、「花形製品」に育てるといった形が普通の企業戦略ですが、その"変速機"に替わる新しい「花形製品」が、もう一度富士市という場所を必要とするかなんてことは分らないです。その製品(またはサービス)が必要とする"地の利"は、東京かもしれないし、中国かもしれないし、メキシコかもしれない。
ジヤトコのような大手自動車部品メーカーは、もうずっと前から生き残る道を考えているだろうし、十分な情報も時間的猶予も内部留保もあるので、その先も製造する製品を変えながら生き残っていくことと思います。
問題なのは、対策を考えていない(あるいは対策する余力がない)、大手自動車部品メーカーからの仕事が多い地元の中小零細企業や、大手自動車部品メーカーの従業員とその家族の消費をあてにしてきた商店や、大手自動車部品メーカーからの法人市民税や固定資産税で潤ってきた富士市役所だったりするでしょう。何の対策もしてないうちに、パタッと仕事や消費や税収が激減する、その時はいずれ来ます。
日本国民にはどこに住んでもいい自由があるので、仕事がなくなれば、仕事があって環境のいいところに引っ越せばいいのかもしれません。ただ、僕は富士市で生まれ育ったし、富士市が好きだし、今は富士市の社会良くするお手伝いを仕事にしているし、これからも仕事にしていきたいし、一生富士市に住みたいのです。…なので、なんとかして富士市に新しい成長産業が育って根をはって欲しいし、また、そうなるように動いていきたいと思っています。
夕張市が炭鉱という産業と共に没落してしまったようなことは避けなければいけません。「富士市はお金持ちだから♪」とかいって税金を無駄遣いするのは、今すぐにやめないと、本当にヤバいことになると思います。