2014.01.10 Friday
新富士駅と富士駅を、接続することは可能なのか?
富士市議会12月定例会での私の一般質問について、内容を書いておきます。(富士山世界遺産センターと富士市の観光戦略についても質問したのですが、そちらはまた今度。)
発言通告書の内容はこちらです。録画映像はこちらです。
「新富士駅と富士駅の接続」について、4行でまとめると次のとおりです。
多くの市民が、新富士駅と富士駅が接続されたら便利になると思ってるのではないでしょうか?
「新富士−富士が接続さえできれば、富士市が活性化するのに」。そんな風に言う人もいます。
私もそう思っていました。
たった徒歩21分の距離が、なぜ繋げられないのか!
もちろん接続されれば良いに決まっています。今でもそう思います。
しかし、この接続について具体的に考えれば考えるほど「これは難しいな…」ということに気がついてきました。
費用対効果や需要予測を考えると、かなり厳しいです。「たったこれだけの距離が…」と思うかもしれませんが、JR東海や国や周辺自治体がかなり積極的にならない限り、富士市の予算を中心にやるのは難しいと考えます。
まず、今の富士市には、それだけの財政的な余裕がありません。富士市の市債残高をみてください。↓の紫の線と右側のメモリがそうです。
ここ数年は、700億円弱でとどまっている状況です。(正確にいうと、この他に特別会計や企業会計の借金もあります。)
しかし数年後、市債残高は一気に増える予定です。余熱利用施設なども含めて総額で250億円ほどかかるのではと言われていますが、新環境クリーンセンター(ゴミの焼却炉)を作らなくてはいけないからです。
今の環境クリーンセンターは昭和61(1986)年に作ったもので、すでに耐用年数の限界がきて長寿命化の改修をしながら使っている状況です。ゴミの焼却炉は、絶対に作らなければいけない施設です。ということで、富士市の市債残高は過去に経験したことがないレベルまで(900億を超えるくらいまで)積み重なるだろうと予想されます。
そういうタイミングで、身延線延伸のような100億を超えるような事業に取り掛かるべきではないと、私は思います。
(私の一般質問の中で、財政部長も「かなり厳しい」と答弁していました。)
身延線を延伸する以外の他の安い方法はどうか。
例えばLRT(ライト・レール・トランジット = 次世代型路面電車)などですが、新富士-富士間の接続のためだけに作るのなら、利用者数が極端に低い無駄な路線になってしまうおそれがあります。少し説明します。
[A] 品川駅→(新幹線)→三島駅→(東海道本線)→富士駅→(身延線)→富士宮駅
[B] 品川駅→(新幹線)→新富士駅→(新設のLRT)→富士駅→(身延線)→富士宮駅
一例として、いま東京に住んでいる人が富士宮に行く場合を考えます。いまは[A]のルートを使います。それと比べて[B]はどうかという視点です。
まず値段ですが、[B]は[A]より、「新富士まで」と「三島まで」の特急料金の差額730円と、新設のLRTの乗車賃分だけ高くなります。(しかも、LRTがJRの運営でないとすると、同じ切符で乗り換えができません)
そして、かかる時間はどうかというと、「新幹線を降りて、LRTのホームまで行って切符買って、待って、乗って、移動して、富士駅で降りて、身延線のホームまで行って」というのに時間がかかってしまうと、結局のところ、[A]と同じ身延線の電車に乗ることになります。
[A]と[B]は、かなり高い確率で、到着時刻は一緒になってしまうんです。
↓これが[A]のルート
↓同じ新幹線で新富士駅まで来たとして…
↓富士駅発の身延線の時刻表をみると、一本早い身延線に乗るためには、11時35分に新富士について11時45分には富士駅にいる必要がある。10分以内で結ぶのは事実上無理。(結局、12時8分発に乗る)
到着時刻が一緒なのに、ワザワザ値段が高い乗り物に乗る人はいないでしょうし、ヤフーなどの乗り換え案内の上位に出てこなくて無視される存在になってしまうと思います(これは身延線の各駅、富士川駅、吉原駅、東田子の浦駅、岳南電車の各駅の利用者にとっても同じことです)。そもそも、鉄道の駅の近くに住んでいない大多数の富士市民にとっては、新富士駅を利用するのに、自分の車で行くか家族に車で送ってもらうかバスかタクシーなので、新富士-富士間のLRTが新設されても利用することはない。…とすると、このLRTを作っても誰が利用するのか見えてこないです。
なので、中途半端な接続の形態にするくらいなら、JR身延線を延伸すべきだと思います。しかし、身延線の延伸は土地の買収も含めて大変な工事になります。東海道本線を立体的にまたがなくてはいけないし、電車は直角に曲がれないので、カーブ区間の土地の買収が必要となります(日本製紙の引き込み線は使えないようです)。大変な工事のワリに需要予測は低いので利用料金で採算が合うようなことはない→JR東海が全部作ってくれるなんてことは考えにくいです。
まとめますと、タイトルで書いた「新富士駅と富士駅を、接続することは可能なのか?」という問いに対しては、富士市が主体になるのは現実的には相当厳しいだろう、というのが私のいまの答えになってしまいます。国や県や富士宮市などに粘り強く協力を要請していく必要があると思います。だいぶ時間がかかるでしょう。まず当面は、富士市全体のバス路線を再整備して、その中でこの富士駅−新富士のルートも強化していくのが現実的だし、取り組むべきです。
「新富士−富士が接続さえできれば、富士市が活性化するのに」→「接続できていないことが、富士市が活性化しないすべての根源」というのは少し違うかなと思います。富士市の活性化のカギはもっと地道で地味な努力の先にあるのではないか…。富士市の魅力をもっと高めて、市外・県外から訪れたくなるまち、住みたくなるまちに向けて、一歩一歩着実に進んでいかなくてはいけません。
いずれにせよ公共交通については、岳南電車の問題も含めて次の2月議会定例会で議論になろうかと思います。未来の公共交通のビジョンをしっかりと提案していきたいと思います。
発言通告書の内容はこちらです。録画映像はこちらです。
「新富士駅と富士駅の接続」について、4行でまとめると次のとおりです。
・DMV計画は、ほぼ白紙になった(JR北海道の不祥事のため)
・新富士-富士間の需要の予測では、一日あたり700人の利用にとどまる
・身延線を伸ばすのは(土地代抜きで)130億円以上かかる
・130億円を富士市単独で捻出するのは難しい
多くの市民が、新富士駅と富士駅が接続されたら便利になると思ってるのではないでしょうか?
「新富士−富士が接続さえできれば、富士市が活性化するのに」。そんな風に言う人もいます。
私もそう思っていました。
たった徒歩21分の距離が、なぜ繋げられないのか!
もちろん接続されれば良いに決まっています。今でもそう思います。
しかし、この接続について具体的に考えれば考えるほど「これは難しいな…」ということに気がついてきました。
費用対効果や需要予測を考えると、かなり厳しいです。「たったこれだけの距離が…」と思うかもしれませんが、JR東海や国や周辺自治体がかなり積極的にならない限り、富士市の予算を中心にやるのは難しいと考えます。
まず、今の富士市には、それだけの財政的な余裕がありません。富士市の市債残高をみてください。↓の紫の線と右側のメモリがそうです。
ここ数年は、700億円弱でとどまっている状況です。(正確にいうと、この他に特別会計や企業会計の借金もあります。)
しかし数年後、市債残高は一気に増える予定です。余熱利用施設なども含めて総額で250億円ほどかかるのではと言われていますが、新環境クリーンセンター(ゴミの焼却炉)を作らなくてはいけないからです。
今の環境クリーンセンターは昭和61(1986)年に作ったもので、すでに耐用年数の限界がきて長寿命化の改修をしながら使っている状況です。ゴミの焼却炉は、絶対に作らなければいけない施設です。ということで、富士市の市債残高は過去に経験したことがないレベルまで(900億を超えるくらいまで)積み重なるだろうと予想されます。
そういうタイミングで、身延線延伸のような100億を超えるような事業に取り掛かるべきではないと、私は思います。
(私の一般質問の中で、財政部長も「かなり厳しい」と答弁していました。)
身延線を延伸する以外の他の安い方法はどうか。
例えばLRT(ライト・レール・トランジット = 次世代型路面電車)などですが、新富士-富士間の接続のためだけに作るのなら、利用者数が極端に低い無駄な路線になってしまうおそれがあります。少し説明します。
[A] 品川駅→(新幹線)→三島駅→(東海道本線)→富士駅→(身延線)→富士宮駅
[B] 品川駅→(新幹線)→新富士駅→(新設のLRT)→富士駅→(身延線)→富士宮駅
一例として、いま東京に住んでいる人が富士宮に行く場合を考えます。いまは[A]のルートを使います。それと比べて[B]はどうかという視点です。
まず値段ですが、[B]は[A]より、「新富士まで」と「三島まで」の特急料金の差額730円と、新設のLRTの乗車賃分だけ高くなります。(しかも、LRTがJRの運営でないとすると、同じ切符で乗り換えができません)
そして、かかる時間はどうかというと、「新幹線を降りて、LRTのホームまで行って切符買って、待って、乗って、移動して、富士駅で降りて、身延線のホームまで行って」というのに時間がかかってしまうと、結局のところ、[A]と同じ身延線の電車に乗ることになります。
[A]と[B]は、かなり高い確率で、到着時刻は一緒になってしまうんです。
↓これが[A]のルート
↓同じ新幹線で新富士駅まで来たとして…
↓富士駅発の身延線の時刻表をみると、一本早い身延線に乗るためには、11時35分に新富士について11時45分には富士駅にいる必要がある。10分以内で結ぶのは事実上無理。(結局、12時8分発に乗る)
到着時刻が一緒なのに、ワザワザ値段が高い乗り物に乗る人はいないでしょうし、ヤフーなどの乗り換え案内の上位に出てこなくて無視される存在になってしまうと思います(これは身延線の各駅、富士川駅、吉原駅、東田子の浦駅、岳南電車の各駅の利用者にとっても同じことです)。そもそも、鉄道の駅の近くに住んでいない大多数の富士市民にとっては、新富士駅を利用するのに、自分の車で行くか家族に車で送ってもらうかバスかタクシーなので、新富士-富士間のLRTが新設されても利用することはない。…とすると、このLRTを作っても誰が利用するのか見えてこないです。
なので、中途半端な接続の形態にするくらいなら、JR身延線を延伸すべきだと思います。しかし、身延線の延伸は土地の買収も含めて大変な工事になります。東海道本線を立体的にまたがなくてはいけないし、電車は直角に曲がれないので、カーブ区間の土地の買収が必要となります(日本製紙の引き込み線は使えないようです)。大変な工事のワリに需要予測は低いので利用料金で採算が合うようなことはない→JR東海が全部作ってくれるなんてことは考えにくいです。
まとめますと、タイトルで書いた「新富士駅と富士駅を、接続することは可能なのか?」という問いに対しては、富士市が主体になるのは現実的には相当厳しいだろう、というのが私のいまの答えになってしまいます。国や県や富士宮市などに粘り強く協力を要請していく必要があると思います。だいぶ時間がかかるでしょう。まず当面は、富士市全体のバス路線を再整備して、その中でこの富士駅−新富士のルートも強化していくのが現実的だし、取り組むべきです。
「新富士−富士が接続さえできれば、富士市が活性化するのに」→「接続できていないことが、富士市が活性化しないすべての根源」というのは少し違うかなと思います。富士市の活性化のカギはもっと地道で地味な努力の先にあるのではないか…。富士市の魅力をもっと高めて、市外・県外から訪れたくなるまち、住みたくなるまちに向けて、一歩一歩着実に進んでいかなくてはいけません。
いずれにせよ公共交通については、岳南電車の問題も含めて次の2月議会定例会で議論になろうかと思います。未来の公共交通のビジョンをしっかりと提案していきたいと思います。