フジブログ!!

富士市議会議員・小池よしはるのブログ
海抜ゼロメートルから富士山の山頂まで、「富士山登山ルート3776」を使って登ってきました
先日、海抜ゼロメートルから標高3776メートルの富士山頂上まで登ってきました。
出発から35時間で頂上までたどり着きました。素晴らしい体験でしたので、ここで紹介します。


(↑76年ぶりに建て替えられた山頂の新しい鳥居の前で)

私は5年程前に村山古道を使って2泊3日かけて海抜ゼロから登っていますが、今回は富士市が提唱している「富士山登山ルート3776」のマップを使ってみました。

・「富士山登山ルート3776」に挑戦!【ルート紹介】 | 富士じかん
http://www.city.fuji.shizuoka.jp/fujijikan/enjoy/kb719c0000002n3y.html


ご注意いただきたいことがあります。以下に私の個人的な体験談を書きますが、これは富士市が推奨している登り方ではありません。富士市の行政は、「富士山登山ルート3776」を3泊4日で登山することを推奨しています。私は、過去に10回以上富士登山をしているし、海抜ゼロからの経験もあるし、何かトラブルがあったら携帯電話で連絡して富士市内に住んでいる家族を呼び出せるという状況もあり、自己責任を認識して準備を整えたうえで、深夜に出発して一気に頂上を目指しました。海抜ゼロからの"一気登山"は危険だしハードであることを十分に認識し、軽い気持ちでは挑戦しないでください。

私は深夜0時に、ふじのくに田子の浦みなと公園にある「はじまりの鐘」をスタートしました。深夜の公園は灯りも少なくてかなり怖いです。ちなみに、「富士山登山ルート3776」では鈴川の富士塚もスタート地点になっています。私は前回村山古道で登った時は、富士塚から登山しました。富士塚スタートの方が、東海道14番目の宿場であった吉原宿の面影を残す吉原商店街を通過するので、市外から挑戦する方にはおすすめしたいです。

スタート地点の「はじまりの鐘」


田子の浦港からの夜景が綺麗です。


はじまりの鐘の近く、公園内の小高い丘の展望台の手前に富士市が設置した「起点」があり、スタンプラリーの用紙やガイドマップ、挑戦計画書などが入っています。ここでスタンプを押します。


スタート時間を深夜0時にした理由は大きく2つ。一つは真夏の真昼間にリュックを背負って市街地のアスファルトの上を長時間歩くのはキツいなと思ったこと。そしてもう一つは(こちらの方が重要)、森林の中の自然歩道を通る「旧料金所ゲート(標高1460m)から富士宮口6合目(標高2490m)」は日没までに登りきらないと遭難しかねずかなり危険ということです。日が昇った午前5時頃に出発することも考えましたが、そうすると自分の脚力では「旧料金所ゲート→富士宮口6合目」の登山中に日が沈んでしまうリスクが高くなってしまいます。そのリスクを少なくするために、深夜に出発してなるべく早めに旧料金所ゲートに着くことを目指しました。

以下、富士市のサイトから、3泊4日を推奨しているルートで紹介します。

■1日目コース


1日目にあたるのは富士市の市街地で、ガイドマップを冷静に辿ったら迷う事なく進めました。



このようなガイドが路上に「富士山登山ルート3776」の道路上にいくつもついています。


私は1日目コースの区間を約3時間で登りました。1日目ゴールのよもぎ湯付近は、灯りも少ないし(というか殆どない)、深夜は静まりかえった閑静な住宅街です。夜間に通過するときは注意が必要です。


市街地を歩くとき問題なのはシューズです。アスファルトの路面ですから当然、スニーカーで十分なんですが、富士山中腹より上で必須となる登山用シューズを、リュックに詰めていくのは結構かさばってしまうので、私は登山用のトレッキングシューズで全行程を登りました。重くて暑いのが難点です。長時間歩くので、靴ずれを起こさないように、ワセリンを足の指に塗りたくっておきました。

1日目コースの最後、絶対に忘れてはならないのが飲食物の買い物です。ガイドマップでは、大淵第一小学校のすぐ北の「ミニストップ富士大渕店」が最後になっていますが、さらに10分ほど進んだところに「セブンイレブン富士市大渕八王子町店」ができていました。それが最後のコンビニで、ここで買いそびれると、ジ・エンド。ここから先は富士山6合目まで売店はありません(表富士グリーンキャンプ場の売店があいている時間なら買えますが、それにしたって随分と先です)。私は、飲料を3リットル買いましたが(その日は猛暑だったこともあり)不足気味になってしまいました。


■2日目コース


2日目コースは、いよいよ山の中に入っていく道になりますが、ずっとアスファルトで舗装された道です。日の出前に歩くと真っ暗すぎたので、私は路上の安全なところに腰をおろして長めの休憩をとり、しばらく夜明けを待ちました。

夜が明けて再出発。富士山頂は、まだまだ遠くに見えます。




さきほどコンビニはもう無いと書きましたが、国道469号を横切る前までは自動販売機はいくつかあります。
↓このDyDoの自販機が最後で国道469号超えたらありません。


このコースのひとつの大きな分岐点が、国道469号(標高約600m)です。

私は、富士山を大きく3つのエリアに分けて考えています。海からおおよそ国道469号までは「人が住むエリア」で、森林限界(およそ登山道の入口)より上は「神が住むエリア」、そして国道469号から森林限界までは俗と聖が交差する「中間エリア」という認識です。自然公園法や文化財保護法で、国道469号より北側での開発は厳しく制限されていて、ここから急に景色が変わります。どっからが富士山?という問いに唯一の回答はありませんが、海から登ってくると「だいたい国道469号より上が富士山」という感触が分かります。

さて、国道469号を超えてからの道なんですが、ここから2時間ほど標高1000mあたりまでは、「実につまらない道」が続きます。ひたすら退屈です。景色に変化がなくて、ずっとヒノキの植林地が続いています。戦後の数十年の間に、よくもこんなにヒノキを植えたなーと感心しますが、動植物の多様性は乏しく、暗くて地味な道です。

ずっとこんな道


富士山はまだ遠い…


路面にガイドが付いているので迷わず行けます。


そんな道が一変するのが、この中継点のベンチのところです。よくこの場所に休憩所を作ってくれたと、富士市の行政を心から褒め称えたい気持ちになりました。


ここから「ふじ山夢ロード」(広域基幹林道富士山麓線)に出るのですが、この中継点が重要なターニングポイントで、ヒノキの植林地から広葉樹を含む混交林へ、暗い森から明るい森へ、単調な景色から多様な景色へ、鮮やかに転換します。

鳥がさえずり、蝶々が飛び、気持ちも晴れてきます。


しかし富士山はまだ遠い。


少し進むと天照教社のところに着きます。


天照教社の近くに村山古道に入れる脇道があります。村山古道の方が近道だし、富士山の野生の森に包まれるような本当に素晴らしい体験ができるんですが…。


道路でない国有林を勝手に通ってはいけない等の理由だと思いますが、「富士山登山ルート3776」では村山古道が示されていません。ルート3776では、アスファルトで整備された林道を進んで大回りすることになります。私は、村山古道で何度か登っているので行けなくもなかったのですが、今回はおとなしくルート3776のとおりに、アスファルトの林道を進みました(村山古道は、事前知識がないと遭難する可能性もあるので、地図や関連書籍を手に入れてから登ってください。)
いつの日か、大手を振って村山古道が通れるようになると良いなと思っています。

そして、ひたすら歩いて表富士グリーンキャンプ場(標高1100m)にたどりつきます。着いたのは午前9時過ぎでした。海抜ゼロをスタートして約9時間、2日目コースだけで約6時間かかりました(長い休憩を含む)。


表富士グリーンキャンプ場は、富士急グループの民間の施設で、今回は宿泊しないので申し訳なかったのですが、売店とトイレを貸して頂きました。

・表富士グリーンキャンプ場
https://www.pica-resort.jp/omotefuji/


■3日目コース


3日目コースは、前半・後半まったく違う2つの道です。旧料金所ゲート(標高1460m)までは、一本道が5キロ続きます。自動車や大型バスが、かなりのスピードを出しているし歩道部分が狭いので、交通事故には気を付けなければいけません。

このあたりは一面にコケが蒸していて、緑一色の森です。


旧料金所ゲート


旧料金所ゲートから富士宮口6合目までは、今までと全く違う自然歩道です。私は、この道を少し甘くみていて大変でした。ガイドマップには平均登山時間として3時間20分と書かれていますが、3時間20分で登れるのは体がフレッシュな場合。すでに海から12時間も歩き続け足に疲労がたまっていた上に、持っていった飲料も不足気味で軽く脱水症状ぽくなってしまい、ここだけで5時間半かかってしまいました。「旧料金所ゲート(標高1460m)から富士宮口6合目(標高2490m)」は、「富士宮口6合目から頂上(標高3776m)」と同じくらいの険しさがあると認識していくべきでした。



森の中を進みますが、登り始めから3時間以上、見渡す限り誰ともすれ違わず完全に孤独の中を歩きました。ビビってしまい写真を撮り損ねましたが、大きなシカがものすごいスピードで何度か通り過ぎていきました。シカがかじったのか、樹皮がない木も多いです。


木に結んであるリボンや、地面に打ち付けてある目印を見つけながら森の中を進みます。一帯は倒木にも岩にも、あらゆるところにコケが蒸しています。小さな折りたたみチェアを持っていくべきだったかなと後悔しました。防水のズボンを履いていましたが、それでも倒木などに直接座って休憩するとベタベタしたもの(何?)がまとわりついたりして不快でした。あと、ハエかアブかブヨか分かりませんが、刺されなかったけど小さな虫がものすごくいて、歩行中ずっと付きまとわれているのも不快でした。防虫対策も必要です。





この標高差1000メートルの植生の変化は美しく見事です。植物の垂直分布のお手本を観察することができます。広葉樹の森から、背丈の低いマツ類が多くなり、やがて宝永火口の火山荒原にたどりつきます。

最後の宝永火口の急坂は砂礫で足が滑りますが、疲労で踏ん張れない…。ホント大変でした。


事前に予約していた、富士宮口6合目の宝永山荘に着いたのは17時になっていました(15時には着けると思っていたのに甘かったです…)。宿泊の予約はしていましたが(もちろん宿泊料金を払い)少し仮眠して装備を整え再スタートして24時間以内に山頂到着を目指したい気持ちもありました。しかし、想像以上の筋肉疲労で動く気力を失ってしまい、ゆっくり一泊することにしました。(宝永山荘には生ビールもあったし!)
やはり日頃から足腰を鍛えていないと、24時間以内に登頂するのは難しいです(来年、再挑戦したいと思います)






■4日目コース


4日目は、いわゆる普通の富士登山です。この日は日曜日で山頂付近の御来光渋滞にはまってしまうことが予想されたのでそれを避けて、朝6時頃にスタート。(筋肉痛がひどかったので…)ゆっくり5時間かけてのぼり、午前11時に山頂に着きました。スタートから35時間。日本一高い山に、海から登ったという達成感に包まれました。



日程の都合と疲労もあって海まで下山することは諦めて、5合目まで下り、そこからバスで帰りました。いつか海抜ゼロメートルから富士山の頂上に行って「海まで戻ってくるまで」を達成したいなと思います。

スタンプラリーも全4ヶ所でスタンプを押せました。


富士市役所に持っていったら、フィニッシャーバッチをもらえました。


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この「富士山登山ルート3776」、ぜひ多くの人に体験して欲しいと心から思います。

富士登山をする人は全国からたくさん来ますが、99%の人が5合目から登山します。5合目というのは、森林限界の境目なので、そこから登っても草木の生えていない岩と砂礫の道をひたすら歩くだけの体験になってしまいます。海抜ゼロメートルから登ると、俗世界からだんだん神々の聖なる場所に近づいている感覚を体験できるし、植生の変化を楽しむこともできます。富士修験の行者や信者たちは、富士登拝に「擬死再生」(いったん死んで生まれ変わる感覚)を求めたとも言われていますが、それも少しわかる気がしました。「富士山登山ルート3776」は、世界第一級のExperience(体験)だと思いました。

「富士山登山ルート3776」がもっと安全に登れるように、私も富士市議会の中で様々な提案をしてきたいと思っています。
| 小池よしはる | 富士山 | 02:25 | comments(1) | trackbacks(0) |
富士登山お疲れ様でした。
まだ1度も富士登山してない私にとって、とても魅力的なレポートでした。海抜ゼロから向かうから、その風景の変化が実感できるんだと思います。一番の魅力?である6合目付近は、大概車で素通りしてしまうところですものね。
この体験を、さらによい富士登山ルート3776に向けて活用してください。せっかくの世界遺産、全世界の人に向けて発信したいですね。
| みゅう | 2017/08/02 10:02 AM |









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小池よしはる(小池義治)

■小池義治(こいけ・よしはる)
1977年9月22日生まれ(45歳)

2011年4月に33歳で富士市議会議員選挙に初当選。現在、市議4期目です。
政党は完全に「無所属」で、富士市議会の会派は「草の根ふじ」に所属しています。

政治活動では、「#つぎの富士市をつくる」をキャッチフレーズに、ダイバーシティ(多様性)とサスティナビリティ(持続可能性)を大事にした政策提案を心掛けています。
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