2018.08.29 Wednesday
中核市移行その前に…、富士市の現状は良いのか悪いのかという大問題
あらゆる会社や組織の一般論として、業績がいつも順調なら良いけれど、業績が悪い時も当然あります。そうした時に「業績が悪い」という現実を見つめて、どうしたら改善できるか力を合わせて考えれば、次の展開がひらけてくると思います。
最悪なのは、業績が悪いのにそれを認めずに、「業績が良い」と誤魔化すことです。誤魔化しを繰り返し、いつか破たんするというパターンは、不正会計で話題になった大企業や、先の大戦のおける日本政府や軍部など、古今東西、事例に事欠きません。
富士市の現状は…。
8月25日に行われた中核市移行検討講演会での小長井市長のある発言に、私はとても大きな危機感を持ったので、ここでとりあげます。パネルディスカッションで、大学生のパネリストが「東京の大学にいった学生は、富士で就職しようとする人が少なくて…」という内容の発言をし、それに対して市長が、それは課題であると認めつつも、「富士市の若い世代の人口は3年前の人口予測の高位推計を上回って推移している」と発言、各種政策はうまくいきつつあり、人口減少は穏やかになってきているとの認識を示しました。
この発言はウソではないのですが、この話の流れでこれを言うことは、まったく適切でないし、富士市の進む道を誤らせる危うい発言だと思いました。
少し長くなりますが、説明します。
普通の会社で、「業績」といったら利益であったり売上で示されますが、行政の場合、それをお金で示せません(歳入という指標は、税制改正などの様々な要素で変動が激しすぎますし…)。そこで、富士市の総合計画で指標として使っているのが「人口」です。富士市の場合は「若い世代の人口」の確保を最上位目標としています。私は、この目標設定もどうかと思ってますが、まぁ決まったことなので…
ここでは若い世代というのを「15歳から39歳」と定義しています。(以下、「若い世代」と書いたら15歳から39歳のこととです)
具体的に見ていきます。
2015(平成27)年4月1日時点の若い世代の人口が↓こちらです。
2015年 実績:69,685人
その時に予測した3年後、つまり今年、2018(平成30)年4月1日の若い世代の人口予測は、2パターンありました。(中位推計は高位推計と同じなので省略)
2018年 高位推計 65,790人 (←人口流出が穏やかになっていく)
2018年 低位推計 65,607人 (←近年特に人口流出が酷かった2014年レベルの人口流出が続く)
若い世代の人口が減っていくのは仕方がないけど、このうち「高位推計レベル」の人口以上になることを目標としよう、と決めました。つまり…
若い世代の人口が高位推計より上 → 政策がうまくいってる
若い世代の人口が高位推計と低位推計の間 → まぁ普通
若い世代の人口が低位推計より下 → 政策が失敗している
さて、実際にことし、2018年4月1日時点の若い世代の人口は何人だったか。
2018年 実績:65,874人
3年間で実に3811人も減っていますが、それでも3年前に予測した、2018年の高位推計「65,790人」を84人上回っていることになります。小長井市長が中核市移行検討講演会で言っていたのは、このことです。これをもって、「富士市のシティプロモーションや移住定住施策などの都市活力再生戦略が割とうまくいっている」としていますが、それで良いのか…。
この数字には考慮しなくてはいけない重要なポイントがあります。前回の富士市議会一般質問で私がとりあげましたが、この3年間で富士市内の一部企業では、ベトナム人を中心に技能実習生を多く受け入れていて、富士市内の外国人はこの3年で1000人近く増えています。その中には若者も多く、それはこの「若い世代」の数字の中に含まれているんです。日本人と外国人に分けて示すと次のとおりです。
2015年 実績:69,685人 (=日本人:67,537人 + 外国人:2,148人)
2018年 実績:65,874人 (=日本人:63,224人 + 外国人:2,650人)
この3年間で、富士市の若い世代は、日本人は4313人減り、外国人が502人増えています。
つまり、若い世代の人口が高位推計よりも上回ったたった一つの理由とは、若い外国人が502人増えた影響で、その影響を取り除いた場合(=外国人人口が3年前と一定だった場合)、低位推計をも235人下回ります。ここからは、「富士市のシティプロモーションや移住定住施策などの都市活力再生戦略が失敗している」という、さっきと真逆のことが言えます。現状は過去最悪レベルのとんでもない人口流出の最中にあります。
大事なことなので赤字フォントで書きますが、2018年の若い世代の人口は高位推計を84人上回ったけど、外国人増加の要因を取り除くと低位推計を235人も下回っているということです。
市長は前者だけに言及し、私は後者をみて危機感をもっています。
外国人も、もちろん同じく富士市民ですので人口統計に含めて当然ですが、富士市の活性化策を集めた「都市活力再生戦略」には、外国人を増やそうなんてことは一言も書いていないし、都市活力再生戦略がうまくいっているかどうかの指標として使うのはおかしいと思います。ましてや、「大学生が富士にUターンしない」という話を受けてのコメントとして、行政のトップが前者のみ話すのは、Uターン施策が効果をあげているかのような間違った現状認識を市民に広げてしまいます。
最近の富士市で急増している外国人は、ベトナムなど東南アジアからの技能実習生で、最長で3年間の在留資格しかないので、富士市に来ても3年経ったら帰国しなければいけません。基本的に永住できない制度の利用ですし、もしも今後、リーマン・ショック級の不況がきたら、一気に引き上げてしまうことになるでしょう。(外国人施策については、別の記事で改めて書きます)
「若い世代の人口」は、富士市の都市活力再生戦略の最上位目標としていますから、普通の企業でいったら「利益」みたいなものです。それほど大事な指標なんです。いまの富士市は「実質的に赤字なのに社長が黒字と言い張っている会社」かのようです
このような市政の現状で、中核市に移行するといって、事務作業を増やすことに年間で数億円、向こう10年間で数十億のお金を使っている場合でしょうか? 今後は、新環境クリーンセンター(ごみの焼却炉)の建設が続き、富士市立中央病院(1984年竣工)、富士市庁舎(1970年竣工)も建て替えなければいけない時期を迎えます。市債残高も過去最高のレベルです
私は、足元を見つめなおすべき時期だと思います。中核市移行を検討する前に、やらなくてはいけないことが沢山あります。富士市ヤバいです。ヤバいという認識が、市役所内で共有できていないことが本当にヤバいと思います。
↑この表は、県内35市町の1年間の人口増減を表しています。
静岡県内で、特に人口流出が多いのが、中核市よりもさらに権限が大きい「政令市」の静岡市や浜松市です。
一方で、人口が増えていたりほぼ維持できているのが、特例市(=いまの富士市)よりも権限が小さい「一般市」の掛川市や袋井市や藤枝市や熱海市、一般市よりもさらに権限が小さい「町」である長泉町や清水町です。
まちづくりの成否に、中核市によって移る権限は関係ありません。市民の幸福度にも関係ないでしょう。
なぜ数十億円も使って中核市になりたいのか…。ちゃんとした理由付けがない限り、私は議員として中核市移行に反対するつもりです。(前の記事も併せて読んでください)
これから市の職員が富士市内26カ所のまちづくりセンターを回って中核市移行について説明するそうです。都合の良い行政からの情報を鵜呑みにしないように気を付けてください。
#nextFUJI
最悪なのは、業績が悪いのにそれを認めずに、「業績が良い」と誤魔化すことです。誤魔化しを繰り返し、いつか破たんするというパターンは、不正会計で話題になった大企業や、先の大戦のおける日本政府や軍部など、古今東西、事例に事欠きません。
富士市の現状は…。
8月25日に行われた中核市移行検討講演会での小長井市長のある発言に、私はとても大きな危機感を持ったので、ここでとりあげます。パネルディスカッションで、大学生のパネリストが「東京の大学にいった学生は、富士で就職しようとする人が少なくて…」という内容の発言をし、それに対して市長が、それは課題であると認めつつも、「富士市の若い世代の人口は3年前の人口予測の高位推計を上回って推移している」と発言、各種政策はうまくいきつつあり、人口減少は穏やかになってきているとの認識を示しました。
この発言はウソではないのですが、この話の流れでこれを言うことは、まったく適切でないし、富士市の進む道を誤らせる危うい発言だと思いました。
少し長くなりますが、説明します。
普通の会社で、「業績」といったら利益であったり売上で示されますが、行政の場合、それをお金で示せません(歳入という指標は、税制改正などの様々な要素で変動が激しすぎますし…)。そこで、富士市の総合計画で指標として使っているのが「人口」です。富士市の場合は「若い世代の人口」の確保を最上位目標としています。私は、この目標設定もどうかと思ってますが、まぁ決まったことなので…
ここでは若い世代というのを「15歳から39歳」と定義しています。(以下、「若い世代」と書いたら15歳から39歳のこととです)
具体的に見ていきます。
2015(平成27)年4月1日時点の若い世代の人口が↓こちらです。
2015年 実績:69,685人
その時に予測した3年後、つまり今年、2018(平成30)年4月1日の若い世代の人口予測は、2パターンありました。(中位推計は高位推計と同じなので省略)
2018年 高位推計 65,790人 (←人口流出が穏やかになっていく)
2018年 低位推計 65,607人 (←近年特に人口流出が酷かった2014年レベルの人口流出が続く)
若い世代の人口が減っていくのは仕方がないけど、このうち「高位推計レベル」の人口以上になることを目標としよう、と決めました。つまり…
若い世代の人口が高位推計より上 → 政策がうまくいってる
若い世代の人口が高位推計と低位推計の間 → まぁ普通
若い世代の人口が低位推計より下 → 政策が失敗している
さて、実際にことし、2018年4月1日時点の若い世代の人口は何人だったか。
2018年 実績:65,874人
3年間で実に3811人も減っていますが、それでも3年前に予測した、2018年の高位推計「65,790人」を84人上回っていることになります。小長井市長が中核市移行検討講演会で言っていたのは、このことです。これをもって、「富士市のシティプロモーションや移住定住施策などの都市活力再生戦略が割とうまくいっている」としていますが、それで良いのか…。
この数字には考慮しなくてはいけない重要なポイントがあります。前回の富士市議会一般質問で私がとりあげましたが、この3年間で富士市内の一部企業では、ベトナム人を中心に技能実習生を多く受け入れていて、富士市内の外国人はこの3年で1000人近く増えています。その中には若者も多く、それはこの「若い世代」の数字の中に含まれているんです。日本人と外国人に分けて示すと次のとおりです。
2015年 実績:69,685人 (=日本人:67,537人 + 外国人:2,148人)
2018年 実績:65,874人 (=日本人:63,224人 + 外国人:2,650人)
この3年間で、富士市の若い世代は、日本人は4313人減り、外国人が502人増えています。
つまり、若い世代の人口が高位推計よりも上回ったたった一つの理由とは、若い外国人が502人増えた影響で、その影響を取り除いた場合(=外国人人口が3年前と一定だった場合)、低位推計をも235人下回ります。ここからは、「富士市のシティプロモーションや移住定住施策などの都市活力再生戦略が失敗している」という、さっきと真逆のことが言えます。現状は過去最悪レベルのとんでもない人口流出の最中にあります。
大事なことなので赤字フォントで書きますが、2018年の若い世代の人口は高位推計を84人上回ったけど、外国人増加の要因を取り除くと低位推計を235人も下回っているということです。
市長は前者だけに言及し、私は後者をみて危機感をもっています。
外国人も、もちろん同じく富士市民ですので人口統計に含めて当然ですが、富士市の活性化策を集めた「都市活力再生戦略」には、外国人を増やそうなんてことは一言も書いていないし、都市活力再生戦略がうまくいっているかどうかの指標として使うのはおかしいと思います。ましてや、「大学生が富士にUターンしない」という話を受けてのコメントとして、行政のトップが前者のみ話すのは、Uターン施策が効果をあげているかのような間違った現状認識を市民に広げてしまいます。
最近の富士市で急増している外国人は、ベトナムなど東南アジアからの技能実習生で、最長で3年間の在留資格しかないので、富士市に来ても3年経ったら帰国しなければいけません。基本的に永住できない制度の利用ですし、もしも今後、リーマン・ショック級の不況がきたら、一気に引き上げてしまうことになるでしょう。(外国人施策については、別の記事で改めて書きます)
「若い世代の人口」は、富士市の都市活力再生戦略の最上位目標としていますから、普通の企業でいったら「利益」みたいなものです。それほど大事な指標なんです。いまの富士市は「実質的に赤字なのに社長が黒字と言い張っている会社」かのようです
このような市政の現状で、中核市に移行するといって、事務作業を増やすことに年間で数億円、向こう10年間で数十億のお金を使っている場合でしょうか? 今後は、新環境クリーンセンター(ごみの焼却炉)の建設が続き、富士市立中央病院(1984年竣工)、富士市庁舎(1970年竣工)も建て替えなければいけない時期を迎えます。市債残高も過去最高のレベルです
私は、足元を見つめなおすべき時期だと思います。中核市移行を検討する前に、やらなくてはいけないことが沢山あります。富士市ヤバいです。ヤバいという認識が、市役所内で共有できていないことが本当にヤバいと思います。
↑この表は、県内35市町の1年間の人口増減を表しています。
静岡県内で、特に人口流出が多いのが、中核市よりもさらに権限が大きい「政令市」の静岡市や浜松市です。
一方で、人口が増えていたりほぼ維持できているのが、特例市(=いまの富士市)よりも権限が小さい「一般市」の掛川市や袋井市や藤枝市や熱海市、一般市よりもさらに権限が小さい「町」である長泉町や清水町です。
まちづくりの成否に、中核市によって移る権限は関係ありません。市民の幸福度にも関係ないでしょう。
なぜ数十億円も使って中核市になりたいのか…。ちゃんとした理由付けがない限り、私は議員として中核市移行に反対するつもりです。(前の記事も併せて読んでください)
これから市の職員が富士市内26カ所のまちづくりセンターを回って中核市移行について説明するそうです。都合の良い行政からの情報を鵜呑みにしないように気を付けてください。
#nextFUJI